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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
笠井 研究室

マルチメディア通信、ユビキタスシステム

所属 大学院情報システム学研究科
情報ネットワークシステム学専攻
メンバー 笠井 裕之 准教授
所属学会 電子情報通信学会
研究室HP http://klab.appnet.is.uec.ac.jp/
印刷用PDF

掲載情報は2015年8月現在

笠井 裕之
Hiroyuki KASAI
キーワード

モバイル端末、スケーラブルマルチメディア符号化・通信、コンテキストアウェアネス、次世代Web、システム実装、Skim@(スキマ)

研究概要

高速・軽量ブラウジングが可能なモバイル映像視聴技術

今では、携帯電話などのモバイル端末で動画を見ることに違和感はなくなっている。ところがこれまでの研究開発は、既存の映像コンテンツをいかにしてモバイルに載せるかということがメインに考えられており、モバイルでの視聴形態についてはあまり意識されていなかった。現実は、モバイルでは短い時間でいろいろなコンテンツを軽快に切り替えながら見るという、既存の映像メディアとは違う見方をしていることが多く、現状では映像コンテンツの操作性やアクセス性、品質等、まだまだストレスを感じざるをえない。

Skim@

そこで、当研究室ではモバイル端末を使った「すきま時間」を利用して、高速で軽快なブラウジング(スキミング)を実現する映像視聴技術のSkim@(スキマ)を研究開発している。この技術を使えば、視聴者は通信の帯域や端末の制約を受けることなく、テレビをザッピングする感覚で、軽快にモバイル端末で動画を楽しむことができる。
この技術を実現するためには、まず送信する映像を秒単位で管理し、数十秒をサムネイルストリームとして用意する。モバイル端末側で動画コンテンツを見ているとき、その裏側で他のサムネイルストリームを自動的に送信してモバイル端末のメモリ上に保存する。別のシーンや動画が見たいときには、溜め込んでおいたサムネイルストリームを再生するため、あたかも見たい動画がリアルタイムに携帯端末に届いているように、軽快に動画にアクセスできる。
しかも、1つのコンテンツをすべて見たい場合にも、差分情報を時間で持っているので、保存されたサムネイルストリーム以降のデータも通信を使ってシームレスに送信される。このことで、視聴者はコンテンツの所在を意識することなく、ストレスなく動画を楽しめる。
携帯電話はメーカーや機種によって搭載されているOSや方式が違う。そのため、搭載されているOSごとに開発を行わなくてはならない。現在、Skim@はOSにWindowsモバイルを搭載した機種で利用できるものを開発中だ。この端末に関しては、かなりのレベルで検証が終わっており、実際に導入できるレベルにまで安定している。ソフトバンクのiPhone版は、基本動作の検証が終わっている。NTTドコモのiアプリ版は、2009年2月に協力会社と販売を開始した。

アドバンテージ

ソフトウェア開発から実装能力までの広範な知識とスキル

当研究室のアドバンテージとして、情報圧縮や圧縮情報の変換等のマルチメディア信号処理やネットワーク制御プロトコル、アルゴリズムの研究だけでなく、多様な言語を用いたソフトウェア開発から多彩なデバイスへの実装能力まで、幅広い知識とスキルを有することがあげられる。
従来の主流は既存のAPIなどのライブラリを使って、特徴的な部分のみをカスタマイズして利用することが多い。

Skim@研究開発スタイル

Skim@に対応した携帯電話

ところが、Skim@の場合は動画のパケット送受信からデコード、サウンドの再生にいたるまで、動画プレイヤほぼすべてを当研究所内で初めから終わりまで制作している。このことで、一見、遠回りに見える従来の開発スタイルを採用しているが、ソフトに問題が見つかった場合にもいち早く対応できるし、機能を追加したい場合にも柔軟に対応することができ、ノウハウが蓄積される。
何よりも、新しい研究のシーズ発見と迅速なアイデア検証、そして高速なプロトタイプ化による「目に見える化」と「社会へのインプット」を実現する研究開発スタイルを貫いている。

すべてを初めから終わりまで作れるエンジニアであること

iPhone用 Skim@ プレイヤの開発環境

また、携帯電話はメーカーへの依存性が高く、非常に難しい作業である組み込み機器へのソフトウェア実装に関する検証作業も当研究室内で行っている。ソフトの開発段階では、携帯電話の動作をコンピュータ上で再現するエミュレータを使って行っているが、携帯電話に実装してみるとうまく動かないということは、よくあることだ。そこで、実際に携帯電話にソフトウェアを組み込んでから正しく動作するかどうかのチェックを行い、不具合が見つかったら即座に修正するといった作業までを一連の作業としている。
このように、ソフトウェア製作から実装までを行うことで数多くのノウハウやモジュールなどの資産を手に入れることができるので、これをうまく利用して幅広い分野での研究開発を短期間で行うことが可能となった。

今後の展開

マルチメディアとサービスの2本柱で製品化を目指す

高機能なシーンジャンプメニュー
コンテンツ選択メニュー

当研究室では、携帯電話を中心としたモバイル端末で利用できるマルチメディア系とサービス基盤系技術の2本柱での展開を考えている。サービス基盤技術とは、インターネットや携帯電話システムなどで利用される共通サービス基盤技術のことで、プライバシー保護などのセキュリティ機能や、利用者のモデリング機能、コンテキスト情報認識・収集機能などのさまざまな機能をOSの上のミドルウェアの形で搭載する。つまり、サービスネットワークのユビキタスプラットフォーム機能を司るベースを作るのだ。
一方のマルチメディア系の技術としては、2015年実験放送・25年本放送開始が予定されているNHKスーパーハイビジョン(7680×4320dpi)のような超高精細な動画を、携帯電話を使って複数のユーザーが同時に見るための技術を研究している。これはただ単に、高解像度画像を携帯電話の画面サイズに圧縮するというものではなく、今までにはなかった、携帯電話ならではの視点で動画を見ることができる画期的なシステムだ。
このように、当研究室では「必ず製品になるものを世の中に出す」を合言葉に、モバイル分野で製品化できるさまざまな技術を、研究開発していく。

研究・産学連携