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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
吉永 研究室

分散・並列処理におけるネットワーク基盤技術と
新しいサービスの研究開発

所属 大学院情報システム学研究科
情報ネットワークシステム学専攻
メンバー 吉永 努 教授
所属学会 IEEE、ACM、情報処理学会、電子情報通信学会
研究室HP http://comp.is.uec.ac.jp/
印刷用PDF

掲載情報は2015年8月現在

吉永 努
Tsutomu YOSHINAGA
キーワード

ビッグデータ処理基盤、リコンフィギャラブルシステム、高性能・高信頼ネットワーク、相互結合網、光インタコネクト技術、高速通信ライブラリ、GPGPU、並列計算アルゴリズム、耐故障ルーティング、SMP型PCクラスタ、クラスタコンピューティング、クラウドコンピューティング

研究概要

分散・並列計算機の研究

分散・並列計算機は、複数のコンピュータをネットワークで接続・連携することで、1台のコンピュータよりもはるかに高い処理能力を発揮することができる。しかし、情報のやりとりや連携をどのように行うのか、故障が発生した場合にどのように対処するのかといった問題を考える必要がある。また、世界最速のコンピュータを多数繋いだとしても、全てのコンピュータの性能をよく引き出し安定稼働させてはじめて、十分な効果が得られるのである。さらに、アプリケーションがその環境を使いこなすことも重要である。

光インタコネクト技術

次世代以降のデータセンタ構築における大きな課題の1つに、ハードウェアの低消費電力化と高性能化の両立が挙げられる。そのためのネットワーク技術として光オンチップネットワークおよびチップ間光インタコネクトが注目されている。光インタコネクトに適合する通信方式は回線交換方式またはそれに類する通信方式となるため、従来の電気ネットワークのパケット通信とは異なる新しい体系が強く求められている。
当研究室では、光に適した新しい通信方式、高性能・高信頼ネットワークの構成および高速通信ライブラリの研究に取り組んでいる。

専用ハードウェア支援によるビッグデータ処理基盤

インターネットとセンサ技術の発展により、社会と生活に関する膨大なデータの蓄積が続いている。大規模データの解析を通して新たな価値を発見しようとする試みは広く取り組まれているが、効率的なエネルギーで十分な計算速度を実現する計算機システムの実現には多くの技術的課題が存在している。
特に、データの読み出し、並び替え、集約、結合に要する時間は、計算時間全体に占める割合が大きく、効率を大きく悪化させる原因になっている。
当研究室では、光ネットワークとストレージとを再構成可能デバイス(FPGA)を介して密結合するハードウェアを開発している。FPGAは通信に要する処理を担うとともに、演算の一部がオフロードされ、データアクセスと計算を統合する、ビッグデータ解析のためのコンパクトで高性能な計算機システムの研究に取り組んでいる。

ストレージ密結合型科学計算アクセラレータ

近年の科学計算は、GPUやXeon Phiなど多数の演算ユニットを持つ近年のメニーコアアクセラレータで高速化が計られている。多数のスレッドが有効なSIMD演算を実行することで高速な計算を実現するが、データが整列されていない場合や条件分岐などのやや複雑な演算が含まれる場合は大幅な性能低下を引き起こす傾向にある。さらに、蓄積された全てのデータを対象とするような計算には、従来の高速化技術とは異なった仕組みが求められる。当研究室では、遺伝子やアミノ酸などの生物情報の類似性を求めるBLASTアルゴリズムを主な対象として、対象データの適切な分散配置と、メニーコアアクセラレータの性能を最大限活かす前処理を、データストレージに直結した専用ハードウェアで実現するストレージ密結合型アクセラレータの研究に取り組んでいる。

インタークラウド・コンピューティング

PCクラスタとプライベートクラウド環境
NW/ストレージ/FPGA密結合ハードウェア

携帯端末の普及と動画配信の充実により、インターネットを流れるデータ量は増大を続けており、それを支える大規模データセンタ内外の通信の効率化が求められている。我々は、増加する通信量の問題を抜本的に改善する新しいデータ転送の仕組みを提案している。
様々なサービスを提供するクラウドにおける大きな問題のひとつは、通信の集中により、計算機間のデータの転送に要する時間が増大してしまうことにある。そこで、最短経路を転送する従来の方法から、空いている通信路をその都度選択する動的な経路制御を導入して混雑を緩和する新しい通信方式の研究開発に取り組んでいる。非最短経路に要する通信時間の増大に対しても、優れたキャッシュ機構の導入により、サービス品質の向上を図る。
動的経路制御とキャッシュ機構が密に結合し、集中していた通信負荷を経路中の各キャッシュに分散・低減すると同時に、通信障害を迅速に検知して自動で復旧する、通信性能の向上と耐障害性の向上を同時に実現する。
また、混雑やサービス品質の向上や、災害時、故障時における復旧の高速化を目的に、ネットワークの状況を適切に観測、制御する機構の研究にも取り組んでいる。

アドバンテージ

アーキテクチャからアプリケーションまで幅広い視点で研究

大規模データ分散処理

当研究室は、分散・並列計算機の性能を最大限に引き出すために、アーキテクチャ、システムソフトウェア、アプリケーションを横断的かつ多角的な視点で研究に取り組んでいることに大きな特徴がある。
分散・並列計算機を設計する上で、計算機やネットワークアーキテクチャに関する深い知識が必要とされる。分散・並列計算機の存在意義は、アプリケーションを高速かつ安定して実行することであり、この目的のためには、アプリケーションの挙動や特性について幅広い理解が求められる。
当研究室は、アーキテクチャからアプリケーションまで全てのレイヤに広く取り組み、真に実用的な分散・並列計算機を提案している。効果的な計算機システムの利用方法を提示する上で、このことは大きなアドバンテージになっている。

今後の展開

基礎研究から一歩踏み出して応用面にも進出

インタークラウド実験環境

2012年からは、既存のソフトウェア資産を利用可能な専用ハードウェア搭載型分散処理フレームワークや、メニーコアプロセッサの全てのコアを有効に使うためのアルゴリズムの研究など、計算の集約と計算機システムの高密度化を目的とする研究を開始した。処理するタスクを適切に分散し、有効な計算を適切な計算資源で行うことで、現在までには実現できなかった省電力で高性能かつ高機能なアプリケーションを提供する方法を探求している。
また、今後さらに重要性が高まると考えられるネットワークセキュリティの研究、FPGAを用いた専用アーキテクチャによる処理の高速化にも、引き続き積極的に取り組んでいく考えである。
これまでに積み上げてきた基礎研究を利用して高性能・高信頼化を推進していくことはもちろん、今後はこの基礎研究を展開して応用にも注力する。
最小限のエネルギー消費で最大限の効果を引き出す、環境と運用コストに優れた計算機システムの研究を通して、新しい情報社会の発展・成熟によりいっそう貢献していきたい。

研究・産学連携